just in time

活字中毒のアラサー女が恋愛を描きます。

終電を見送って

あの日、あなたが、「話しするの、緊張する」と言ったから。私もつい、その気になってしまった。私にだけ、懐かない後輩。

「ヤキモチ妬いてた」って言葉に出してしまった。


終電を見送り、あなたとタクシー乗り場へ向かう。「俺んち、来ます?」と問われ、「手ぇ出さないなら、行ってもいーよ?」と答えた。


出すわけないでしょ、って返事を予測していたら、「それは無理でしょ…」って答え。

そんなこと言われたら家に行けなくなるじゃんって思ったけど、自然とそのまま同じタクシーへ乗ってしまった。彼が住所を伝え、ゆっくりと出発する。少しだけ、会話をしていた。彼がそっと私の左手に、右手を重ねてくる。

酔いと緊張で、思考回路は完全にシャットダウンされていた。あったかくて、細長い指。大きくて、優しく包んでくれる手。どうしたらいいのか、わからない。何を話せばいいのか、手を、動かしてもいいのか。

握り返すことはしなかった。ここまで来ておきながら、いまだに、人妻が誘っていると思われたくなかったから。


家に着き、そっと手を離す。片付けられていない彼のマンションへ入る。ソファへ座って、チューハイを受け取る。横に、彼が座る。

しばらくお酒を飲みながら話をしていたけど、気がつくと、キスをされていた。少しだけ強引な、噛みつくようなキス。唇に、舌先にピリっとするような甘い痛みが走る。この絶妙な力加減は一体どこで覚えたのかな。強くて優しいキスで、何人の女の子を泣かせてきたのかな。

背中に回された手で、ギュッと何度も抱き寄せられて、そのままひょいっとお姫様抱っこをされてベッドに運ばれる。